第2章 脹相〜一緒に住む?〜
うちに来れば?』
それは、何気ない一言だった。
「……脹相って、今どこに住んでるの?」
任務帰り。
隣を歩く脹相に、私はふと尋ねた。
「決まった場所はない」
「え?」
「寝る場所が必要なら、その都度探している」
あまりにも淡々と言うので、私は思わず足を止めた。
「それって……大丈夫なの?」
「ああ。問題ない」
「いや、問題あるでしょ」
「そうか?」
脹相は本気で分かっていない顔をしている。
私は少し考えた。
そして、何となく口にした。
「……じゃあ、うちに来れば?」
「……何?」
脹相が初めて、明らかに動揺した。
「私の家。部屋なら余ってるし」
「……」
「嫌ならいいけど」
「いや」
返事が早かった。
「……いいのか」
「うん。別に」
「本当に?」
「そんなに確認する?」
「ああ」
脹相は真剣な顔をしていた。
私は思わず笑う。
「じゃあ決まりね」
「ああ」
そう答えた脹相は、いつも通り無表情だった。
ただし。
その胸の内は、決して穏やかではなかった。
――俺が?
――お前の家に?
――毎日?
脹相は平静を装って歩いていた。
だが、頭の中では同じ言葉が何度も繰り返されている。
『うちに来れば?』
あの言葉が、どうしても嬉しかった。
それを悟られるのが恥ずかしくて、脹相は無意識に顔を逸らす。
「……」
「どうしたの?」
「何でもない」
「ふーん?」
こうして、脹相の居候生活が始まった。