• テキストサイズ

呪術廻戦〜脹相〜

第18章 脹相〜後ろのチャック〜


玄関へ向かう。

 靴を履いていると。

「脹相」

「何だ」

「今日、お願いしてよかった」

「……何がだ」

「チャック」

「……」

「自分じゃ閉められなかったから」

「そうか」

「またお願いするかも」

 何気なく言った。

 脹相が一瞬固まる。

「……」

「?」

「……ああ」

 少し遅れて返事が返ってくる。

「頼まれれば、やる」

「ほんと?」

「ああ」

 脹相は靴を履きながら、顔を逸らした。

 あなたは気づいていない。

 その言葉だけで。

 脹相の胸が少しだけ嬉しくなったことに。

「じゃあ行こう」

「ああ」

 二人で家を出る。

 並んで歩きながら。

 あなたは今日の予定を楽しそうに話している。

 脹相はそれを聞きながら、時々あなたを見る。

 そして。

 誰にも聞こえないほど小さく呟いた。

「……また頼んでくれ」

「何か言った?」

「いや」

「そう?」

「ああ」

 脹相は前を向く。

 付き合っていない。

 だから、この気持ちを口にすることはできない。

 けれど。

 あなたが自分を頼ってくれることが、少し嬉しい。

 ただチャックを閉めただけ。

 それだけのことなのに。

 脹相にとっては。

 その日の中で、妙に忘れられない出来事になった。
/ 126ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp