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呪術廻戦〜脹相〜

第18章 脹相〜後ろのチャック〜



「……」

 脹相の指がチャックに触れる。

「動くな」

「うん」

 慎重にチャックを持ち上げる。

 ゆっくり。

 ほんの少しずつ。

 その間、脹相は何も話さない。

「……」

「……」

 静かすぎて、逆に気になる。

「脹相」

「ああ」

「何か緊張してない?」

「していない」

「ほんと?」

「ああ」

 即答。

 けれど声が少し硬い。

「……」

 脹相は必死に平静を保っていた。

 目の前にいるあなたの背中。

 いつもとは違う服装。

 それだけなのに、妙に意識してしまう。

 付き合っているわけではない。

 だからこそ。

 こんなふうに近づくことに、どうしても戸惑う。

「……あと少し」

「うん」

 チャックを最後まで上げる。

「終わった」

「ありがとう」

 私は振り返る。

「ちゃんと閉まってる?」

「ああ」

「よかった」

 鏡を見る。

 きちんと閉まっている。

「脹相、ありがとう」

「気にするな」

「助かった」

 笑いながらそう言う私を見て。

 脹相は少しだけ目を逸らした。

「……どうしたの?」

「何でもない」

「またそれ」

「本当に何でもない」

「ふふ」

 私は鏡の前で髪を整える。

「ねえ」

「ああ」

「変じゃない?」

「変ではない」

「じゃあ、似合ってる?」

「……ああ」

 少し間があった。

「よく似合っている」

「……」

 今度は私の方が黙った。

「ありがと」

 何となく恥ずかしくなって、鏡から目を逸らす。

 脹相も黙っている。

 しばらくして。

「……」

 脹相がふと私を見る。

 ワンピースの後ろ姿を思い出す。

 さっきチャックを閉めたときの距離。

 指先に伝わった微かな温度。

 あまり考えないようにしていたのに。

 思い出すほど、意識してしまう。

「脹相?」

「ああ」

「行こう?」

「……そうだな」

 
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