第17章 脹相〜看病〜
「測れ」
「うん」
体温計を脇に挟む。
数十秒後。
「……」
「どうだった?」
「38度」
「……結構あるね」
「ああ」
脹相の表情が曇る。
「今日は一日休む」
「分かった」
「何か食べられるか?」
「……あんまり」
「ゼリーは?」
「それなら食べられるかも」
「分かった」
脹相はすぐに部屋を出ていく。
しばらくすると、冷たいゼリーと水を持って戻ってきた。
「少しずつ食べろ」
「ありがとう」
「無理はするな」
「うん」
スプーンを持つ。
けれど、思った以上に身体が重い。
「……」
脹相がこちらを見ている。
「どうしたの?」
「手が震えている」
「え?」
「貸せ」
脹相がスプーンを受け取った。
「えっ」
「食べさせる」
「いや、大丈夫だよ」
「大丈夫ではない」
「でも……」
「いいから」
脹相は真剣な顔をしている。
仕方なく口を開ける。
「……」
ゼリーを一口。
「どうだ」
「おいしい」
「そうか」
もう一口。
ゆっくり食べさせてくれる。
「……なんか恥ずかしい」
「なぜだ」
「だって、子供みたい」
「病人だ。気にするな」
「……はい」
それからしばらく。
脹相は何も言わず、私が食べ終わるまで付き合ってくれた。
「もういい」
「分かった」
脹相が器を置く。
「寝ろ」
「うん」
布団をかけ直してくれる。
その手つきが思った以上に優しくて。
「……脹相、ありがとう」
「礼はいい」
「でも」
「俺がしたいからしているだけだ」
「……」
胸が少し温かくなる。
脹相は椅子を持ってきて、ベッドの横に座った。
「寝るまでここにいる」
「いいよ。脹相も休んで」
「俺は大丈夫だ」
「でも……」
「お前の方が大事だ」
「……」
あまりにも自然に言われて。
私は何も言えなくなった。
「……そっか」
「ああ」
目を閉じる。
すぐに眠れそうだった。
けれど。
「脹相」
「ああ」
「手……」
「何だ」
「握っててほしい」
一瞬。
脹相が黙った。
「……分かった」
大きな手が、私の手を包む。
温かい。
「これでいいか」
「うん」
そのまま目を閉じる。