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呪術廻戦〜脹相〜

第16章 脹相〜声をかけられる脹相にモヤモヤ〜


「……」

 なぜか胸がすっきりしない。

 むしろ。

 さっきよりモヤモヤしている。

「……行こっか」

「ああ」

 歩き出す。

 隣に脹相がいる。

 いつもと変わらない。

 なのに。

「……」

 私は少しだけ歩く速度を上げた。

「どうした?」

「何でもない」

「そうか」

 脹相はそれ以上聞かなかった。

 しばらく歩く。

 私は黙っている。

 本当は。

 聞きたいことがあった。

 あの子と話してみたかった?

 可愛いと思った?

 連絡先を聞かれたら交換した?

 そんなことを考えてしまう自分が嫌だった。

 私と脹相は、付き合っているわけじゃない。

 だから。

 誰かが脹相に声をかけたからといって、嫌だなんて言える立場じゃない。

「……」

 私は俯いた。

 すると。

「お前」

「ん?」

「さっきから静かだな」

「……そう?」

「ああ」

 脹相がこちらを見る。

「何かあったか」

「何もないよ」

「……そうか」

 脹相はそれ以上聞かなかった。

 けれど。

 その横顔には、ほんの少しだけ笑みが浮かんでいた。

「……?」

 私は気づかない。

 脹相は気づいていた。

 さっきからあなたの歩幅が少しだけ違うこと。

 返事がいつもより短いこと。

 時々、こちらを見ようとしてやめていること。

 そして何より。

 あの女の子が去ったあとから、あなたの表情が少し曇っていること。

 全部。

 分かっていた。

 ――もしかして。

 脹相の胸に、小さな期待が生まれる。

 だが、確かめるようなことはしない。

 そう決めていた。

「……」

 それでも。

 嬉しかった。

 どうしようもないくらい。

 自分が誰かに声をかけられたことではない。

 そのときのあなたの反応が。

 少しだけ、嫌そうだったことが。
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