第16章 脹相〜声をかけられる脹相にモヤモヤ〜
休日の昼下がり。
今日は脹相と二人で出かけていた。
「この店、見てみたい」
「ああ」
私が指差した店へ、脹相がついてくる。
特別な予定があるわけではない。
気になる店を覗いて、適当に昼食を食べて、疲れたら休む。
いつもの二人の休日だった。
店を出てしばらく歩いていると。
「……あの」
後ろから声がした。
私たちが振り返る。
そこには、知らない女の子が立っていた。
「あの、すみません」
「何だ」
脹相が答える。
女の子は少し緊張した様子で脹相を見る。
「あの……突然すみません。さっきから見かけていて」
「……?」
「すごく素敵だなと思って……」
私は黙った。
「もしよかったら、少しお話しませんか?」
「……」
胸の奥が、ほんの少しだけざわついた。
別に。
脹相が誰かに話しかけられただけだ。
それだけなのに。
「……」
何となく、嫌だった。
自分でも理由が分からない。
脹相は少し困ったように女の子を見る。
「すまない」
「え?」
「俺は今、連れといる」
そう言って。
脹相がこちらを見る。
「……」
目が合った。
「だから、話すことはできない」
「あ……そうですか」
女の子は少し残念そうに笑った。
「すみません。突然」
「いや」
脹相はそれだけ答える。
「失礼します」
女の子が去っていく。
私はその背中を見送った。