第15章 脹相〜友達の恋愛相談〜
「じゃあ、好きって伝えるのは?」
友達が聞く。
「まだ早いと思う」
「どうして?」
「相手の気持ちが分からないまま伝えてしまえば、相手を困らせるかもしれない」
「そっか……」
「だから」
脹相はカップに視線を落とす。
「相手が自分といることを心地よく思っているのか、それを知ることからでいい」
「なるほど」
友達は少し安心したように笑った。
「なんか、二人に相談してよかった」
「本当?」
「うん。焦らなくてもいいんだって思えた」
「それならよかった」
私は笑う。
友達はそのあとも、好きな人との出来事をいくつか話してくれた。
どんな話をしたとか。
どこへ行ったとか。
最近、相手から連絡が増えたとか。
私は一つ一つ聞きながら、友達と一緒に喜んだ。
脹相も、ときどき短く意見を言う。
それ以外は静かに聞いていた。
けれど。
その話を聞いているうちに。
脹相の中に、ある考えが浮かんでいた。
――自分たちも、似ている。
好きな人と二人で出かける。
相手の好みを覚える。
困ったときには傍にいる。
一緒に暮らしている。
帰りが遅ければ心配する。
手を繋ぐこともある。
膝枕をしてもらうこともある。
けれど。
それを口にすることはなかった。
もちろん、友人の相談を自分たちの話に変えるつもりもない。
何より。
あなたに余計なことを意識させたくなかった。
「……」
脹相は静かにあなたを見る。
あなたは友達の話を聞きながら、楽しそうに笑っている。
その横顔を見て。
胸の奥が少しだけ温かくなる。
――俺も。
同じなのかもしれない。
そう思った。
だが。
まだ言わない。
今は、それでいい。
「脹相?」
「ああ」
「どうしたの?」
「何でもない」
「また?」
「ああ」
あなたが小さく笑う。
その笑顔を見ながら、脹相は視線を落とした。
友達の恋愛相談は、しばらくして終わった。
「今日はありがとう」
「ううん」
「また相談してもいい?」
「ああ」
脹相が頷く。
「もちろん」