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呪術廻戦〜脹相〜

第13章 脹相〜帰ってこない日〜


「……あったかい」

「そうか」

「もう行かない?」

「今日は行かない」

「ほんと?」

「ああ」

「……よかった」

 あなたの腕に、さらに力が入る。

 脹相は困ったように息を吐いた。

「……お前は、寝ぼけているのか」

「ん……」

「明日になったら覚えていないかもしれないな」

 そう呟きながら。

 脹相はあなたを引き離せなかった。

 むしろ。

 あなたが倒れないように、背中へ腕を回して支える。

「……」

 このままでいい。

 そう思ってしまった。

 付き合っているわけではない。

 だから、本来ならこんなことをしてはいけないのかもしれない。

 けれど。

 あなたが自分を求めてくれたことが。

 どうしようもなく嬉しかった。

「……脹相」

「何だ」

「好き……」

「……」

 脹相の呼吸が止まる。

 しかし。

「……すき……」

 あなたは眠ったままだった。

 どうやら夢の中で何かを呟いただけらしい。

「……」

 脹相は目を閉じた。

「……それは、今聞かなかったことにしておく」

 少し震える声。

 けれど。

 顔は隠せないほど赤くなっていた。

 しばらくして、あなたの呼吸が完全に寝息へ変わる。

 脹相はそっとあなたを抱き上げた。

「……ここで寝るな」

 寝室へ運ぼうとする。

 すると。

「……やだ」

「……」

 腕がまた首に回る。

「脹相と……いる」

「……分かった」

 脹相は諦めた。

「今日はここで寝よう」

 ソファに座り直す。

 あなたは脹相の肩へ寄りかかる。

 脹相も、そのまま動かない。

「……明日の朝」

 眠っているあなたに聞こえるはずもない声で呟く。

「今日のことを覚えていなくてもいい」

 あなたの髪をそっと撫でる。

「だが……」

 少しだけ迷って。

「俺は忘れない」

 抱きついてきた腕の温もり。

 「寂しかった」という言葉。

 そして。

 自分が帰ってきたことを喜んでくれたこと。

 全部。

 大切に覚えておく。

「……おやすみ」

 脹相はそう呟いて。

 あなたが安心して眠れるように、静かに隣にいた。

 まだ恋人ではない。

 告白もしていない。

 けれど。

 その夜だけは。

 二人の距離は、いつもよりずっと近かった。
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