第12章 脹相〜膝枕〜
しばらくすると、本当に眠ってしまった。
私はその寝顔を見ながら、髪をゆっくり撫で続ける。
付き合っているわけではない。
恋人でもない。
それなのに。
こんなにも近くにいる。
こんなふうに触れ合える。
その距離が、少しだけ不思議だった。
「……脹相」
「……」
「起きてる?」
「……寝ている」
「寝てる人は返事しないよ」
「……」
私は小さく笑う。
脹相は目を閉じたまま、私の膝に頭を預けている。
その表情は、いつもよりずっと穏やかだった。
そして眠りに落ちる直前。
「……このまま、もう少しだけ」
小さな声が聞こえた。
「うん」
私は優しく答える。
「もう少しだけね」
その約束に安心したように、脹相の呼吸がゆっくりになる。
私はそのまま、何も言わずに髪を撫で続けた。
まだ付き合ってはいない。
けれど。
この静かな時間だけは。
まるで恋人同士のようだった。