第12章 脹相〜膝枕〜
しばらくして。
脹相の呼吸がゆっくりになる。
眠ったらしい。
私はその顔を見下ろした。
普段はどこか険しい表情をしていることが多い。
けれど、こうして眠っていると少し幼く見える。
「……かわいい」
小さく呟く。
もちろん、聞こえていないと思っていた。
しかし。
「……聞こえている」
「えっ」
脹相が目を閉じたまま言った。
「起きてたの!?」
「ああ」
「恥ずかしい……」
私は慌てて手を止める。
すると脹相が目を開けた。
「なぜやめる」
「だって……」
「続けてくれ」
「……」
「嫌ならいい」
「嫌じゃないよ」
私はまた髪を撫でる。
脹相は目を閉じた。
「……落ち着く」
「ほんと?」
「ああ」
「ならよかった」
しばらく静かな時間が続く。
私は何となく、脹相の髪を指で梳く。
脹相はされるがままになっている。
そして、ふと口を開いた。
「……お前は」
「うん?」
「こういうことを、誰にでもするのか」
「え?」
「膝枕だ」
「しないよ」
即答すると。
「……そうか」
脹相の声が少しだけ柔らかくなる。
「脹相だからしてる」
「……」
沈黙。
脹相の耳が赤くなった。
「どうしたの?」
「……何でもない」
「またそれ」
「……」
しばらくして。
「俺も」
「うん?」
「お前だから、こんなことをしている」
「……?」
「他の人間なら断っている」
私は少し驚いた。
「そうなんだ」
「ああ」
脹相は目を閉じたまま続ける。
「お前の近くにいると、落ち着く」
「……」
「だから……もう少し、このままでいたい」
その言葉に、胸が温かくなる。
「うん」
私は笑った。
「好きなだけどうぞ」
「……ありがとう」
脹相はまた目を閉じる。