第12章 脹相〜膝枕〜
休日の午後。
珍しく予定のない一日だった。
私はソファに座ってスマホを眺めていて、脹相はその隣で本を読んでいた。
テレビもついていない。
聞こえるのはページをめくる音と、時計の針が動く音だけ。
穏やかな時間だった。
「……」
ふと脹相を見る。
いつもより少し疲れているように見えた。
「脹相」
「ああ」
「眠い?」
「少し」
「寝ればいいじゃん」
「そうするつもりだった」
そう言いながらも、本を閉じるだけで横になろうとはしない。
「どうしたの?」
「……」
脹相は少し考えてから答えた。
「寝ると、お前の邪魔になるだろう」
「ならないよ」
「そうか」
それでも動かない。
私は少し考えて。
「じゃあさ」
「何だ」
「膝枕する?」
「……」
脹相が固まった。
「……何?」
「だから、膝枕」
「……」
明らかに困っている。
「嫌?」
「いや……」
「じゃあ、する?」
「……本当にいいのか」
「うん」
脹相はしばらく私を見る。
そして、ゆっくりとソファへ横になった。
「……ここでいいか」
「うん」
私は自分の太ももを少しずらす。
「どうぞ」
脹相が慎重に頭を乗せる。
「……」
その瞬間。
脹相の体がわずかに強張った。
「大丈夫?」
「ああ」
「緊張してる?」
「……少し」
「ふふ」
「笑うな」
「だって、脹相がこんなに緊張すると思わなくて」
「……仕方ないだろう」
「何で?」
「お前の膝だからだ」
あまりにも真っ直ぐ言われて、今度は私のほうが固まった。
「……」
「……」
二人とも黙る。
私は誤魔化すように、脹相の髪をそっと撫でた。
「……」
脹相が目を閉じる。
「嫌だった?」
「いや」
「よかった」
もう一度、髪を撫でる。
脹相は何も言わない。
ただ、少しずつ肩の力が抜けていく。
「眠っていいよ」
「ああ」
「ちゃんと起こすから」
「……分かった」