第10章 脹相〜友達に紹介〜
それから三人で話しているうちに、友達も少しずつ脹相に慣れていった。
「脹相って、思ったより話してくれるんだね」
「そうか?」
「うん。もっと無口なのかと思ってた」
「普段はそうだよ」
私が言う。
「でも家だと結構話す」
「へえ」
友達が私を見る。
「それって、心を許してるってことじゃない?」
「……そうなのかな」
「そうだと思う」
脹相は黙って聞いている。
そして、ふと私の手元を見る。
私が飲み物を飲もうとしている。
そのマグカップは、脹相のものと色違いだった。
それを見て。
脹相は小さく笑った。
「……」
友達がそれに気づく。
「今、笑った?」
「……?」
「脹相、今笑ったよね?」
「そうか?」
「うん」
私は脹相を見る。
「ほんとだ」
「……」
「珍しい」
「……お前たちが騒ぐほどのことではない」
そう言いながらも、脹相は少しだけ嬉しそうだった。
夕方。
友達が帰る時間になった。
「今日はありがとう」
「ううん。楽しかった」
玄関で友達を見送る。
「じゃあまたね」
「うん。また遊ぼう」
友達が帰っていく。
ドアが閉まる。
「……」
私は振り返った。
「どうだった?」
「何がだ」
「友達に会うの」
「……悪くなかった」
「ほんと?」
「ああ」
脹相は少し考えてから言った。
「お前が普段、誰と過ごしているのか少し分かった」
「ふふ。何それ」
「……知りたかった」
「え?」
脹相は視線を逸らす。
「お前のことを、もっと知りたいと思っただけだ」
私は少し黙った。
「……そっか」
胸が少しだけ温かくなる。
「じゃあ、また紹介するね」
「ああ」
「今度はもっと色んな友達に」
「……」
「嫌?」
「いや」
脹相は少しだけ笑った。
「お前の大切な人たちなら、知っておきたい」
その言葉に、私は嬉しくなって笑った。
「じゃあ、次もよろしくね」
「ああ」
そして二人でリビングへ戻る。
棚には、今日も色違いのマグカップが並んでいる。
まだ恋人ではない。
けれど。
少しずつ。
お互いの世界に、お互いが入り始めていた。