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呪術廻戦〜脹相〜

第9章 脹相〜お留守番はできないから迎えに行く〜


「……」

 私の手に触れる。

「どうしたの?」

「……何でもない」

 そのまま、手を握った。

 いつもより少し強い。

「脹相?」

「今日は離れるな」

「……うん」

 私は握り返す。

 その瞬間。

 脹相はようやく安心したように息を吐いた。

「……よかった」

「何が?」

「無事で」

 私は足を止めた。

「……脹相」

「何だ」

「本当に心配してくれてたんだね」

「ああ」

 脹相は私を見る。

「お前が帰ってこないと、落ち着かなかった」

 まっすぐな言葉だった。

 私は少しだけ胸が温かくなる。

「じゃあ、これからは遅くなるときちゃんと連絡する」

「ああ」

「約束」

「……約束だ」

 家が近づいてくる。

 いつもの道。

 いつもの二人。

 けれど今日は、少しだけ違っていた。玄関に着くと、脹相が鍵を開ける。

「ただいま」

「……おかえり」

 いつもの言葉。

 けれど。

 脹相はあなたが家の中へ入ったのを確認してから、ようやく肩の力を抜いた。

「疲れたか?」

「ちょっとだけ」

「なら、休め」

「うん」

 私はソファへ向かう。

 脹相はその後ろ姿を見ながら、静かに思う。

 ――帰ってきてくれてよかった。

 迎えに行った理由なんて、いくらでも説明できる。

 暗かったから。

 連絡がなかったから。

 心配だったから。

 けれど、本当はそれだけではない。

 ただ。

 あなたの帰る場所に、自分もいたかった。

 あなたが「ただいま」と言う場所で。

 自分が「おかえり」と言いたかった。

 それだけだった。

「脹相?」

「何だ」

「今日は迎えに来てくれてありがとう」

「ああ」

「嬉しかった」

 脹相は少しだけ目を伏せる。

「……また遅くなったら迎えに行く」

「え?」

「連絡してくれれば」

「ふふ。じゃあお願いしようかな」

「ああ」

 そう答えた脹相の表情は、ほんの少しだけ嬉しそうだった。

 あなたが無事に帰ってきた。

 それだけでいい。
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