• テキストサイズ

呪術廻戦〜脹相〜

第7章 脹相〜着替え中の脹相〜


「……顔が赤かったから」

「え?」

「気になった」

 私の顔がまた赤くなる。

「……っ」

 その瞬間。

 脹相の心臓が跳ねた。

 ――まただ。

 また赤くなった。

 今度は明らかに、自分の言葉で。

 脹相は思わず息を止めた。

「……」

「……なに?」

「いや」

 目を逸らす。

 けれど、口元がほんの少し緩んでいた。

「……可愛いと思った」

「え?」

「……」

 言ってしまった。

 脹相自身も驚いている。

「今、何て……」

「忘れろ」

「無理!」

 私は真っ赤になって顔を覆った。

 脹相はそんな姿を見て、しばらく黙っていた。

 そして、自分の胸元に手を当てる。

 速い。

 心臓が、どうしようもなく速い。

 ――まずい。

 今まで以上に、意識してしまう。

 同じ家に住んでいる。

 毎日顔を合わせる。

 一緒に食事をする。

 それだけでも十分近いのに。

 今日からは。

 あなたが自分を男として意識しているかもしれない。

 そう思ってしまった。

「……脹相」

「何だ」

「もう忘れて」

「……努力する」

「絶対忘れてないでしょ」

「ああ」

「もう!」

 私が恥ずかしそうに笑う。

 脹相も小さく笑った。

 その日から。

 脹相は、あなたの前で着替えることがなくなった。

 必ず鍵をかける。

 必ず確認する。

 けれど、それは単なる配慮だけではなかった。

 あの日。

 自分を見て真っ赤になったあなたの顔が、どうしても忘れられない。

 あれはただの恥ずかしさなのか。

 それとも。

 自分を少しでも異性として意識してくれているのか。

 答えはまだ分からない。

 それでも。

 脹相にとっては、その可能性だけで十分だった。

 そして夜。

 自分の部屋で一人になった脹相は、今日のことを思い出して顔を伏せる。

「……可愛いと思った、か」

 口に出してから、また耳が熱くなる。

 けれど。

 今度は、その言葉を撤回するつもりはなかった。

 本当にそう思ったのだから。
/ 126ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp