第5章 脹相〜柔軟剤〜
夕方。
家に帰る。
「ただいま」
「おかえり」
脹相の声が返ってくる。
私は買ったものを片付けるためにキッチンへ向かった。
脹相はその背中を見つめる。
また、ふわりと香る。
同じ柔軟剤。
同じ香り。
それでも、やっぱり甘い。
「……」
脹相は小さく息を吐いた。
誰も気づかない。
〇〇自身も。
悠仁も。
きっと誰にも分からない。
だから、この小さな秘密は自分だけのもの。
あなたからする、少し甘い香り。
それを感じられることが、脹相にはどうしようもなく嬉しかった。
「脹相、何してるの?」
「……何でもない」
「また言ってる」
笑い声が響く。
脹相もほんの少しだけ笑った。
――いつか。
この香りを感じることが当たり前になればいい。
そんな願いを胸に。
脹相は、私のすぐ隣に立った。