第4章 脹相〜マグカップ〜
帰り道。
脹相は買い物袋を全部持っていた。
「私も持つよ」
「いい」
「でも重いでしょ」
「問題ない」
「じゃあ半分――」
「いい」
頑なだった。
私は諦めて、隣を歩く。
家に帰って、買ったものを片付ける。
最後に残ったのは、二つのマグカップ。
「ねえ、並べてみよう」
私は棚に二つのマグカップを並べた。
色違いの二つが、ぴったり隣り合う。
「かわいい」
「ああ」
「明日から使おうね」
「ああ」
脹相はしばらく、その二つを見つめていた。
同じ形。
違う色。
けれど、並べれば一つのセットに見える。
「……お揃い」
脹相が小さく呟く。
「うん」
「……悪くない」
「ふふ。気に入った?」
「ああ」
脹相はほんの少しだけ笑った。
「かなり」
その夜。
自分の部屋へ戻った脹相は、今日のことを思い返していた。
手を繋いだこと。
二人で買い物をしたこと。
そして、お揃いのマグカップ。
明日の朝。
目を覚ましてリビングへ行けば、そこには彼女がいる。
そして、自分と同じマグカップを手に取る。
その光景を想像するだけで、胸が温かくなる。
「……恋人になれたら」
小さく呟く。
けれど今はまだ、それでいい。
お揃いのマグカップが二つ、隣り合っている。
それだけで、脹相には十分だった。
――今はまだ。
いつか、この二つのマグカップが置かれている場所を。
二人の「家」と呼べる日が来ればいい。
そんな願いを胸に、脹相は静かに目を閉じた。