第4章 脹相〜マグカップ〜
街に出ると、人が多かった。
「わあ、今日混んでるね」
「ああ」
「はぐれそう」
そう言った瞬間、脹相が私の手首を掴んだ。
「……?」
「離れるな」
「うん」
人混みを抜けるときも、脹相は手を離さなかった。
私はその手を見て、少しだけ笑う。
「ねえ」
「何だ」
「手、繋いでもいい?」
脹相が止まる。
「……」
「嫌?」
「いや」
短く答える。
そして、手首を掴んでいた手を離すと、今度は私の手をしっかり握った。
大きくて、温かい手。
「……これでいいか」
「うん」
私が笑う。
脹相は前を向いたまま、少しだけ握る力を強めた。