第4章 脹相〜マグカップ〜
「ねえ、脹相」
「何だ」
休日の朝。
私はソファに座っている脹相の隣に腰を下ろした。
「今日、暇?」
「ああ」
「じゃあさ、一緒に買い物行かない?」
脹相がこちらを見る。
「買い物?」
「うん。日用品も買いたいし、服も見たいんだよね」
「……分かった」
「ほんと? じゃあ決まりね」
私が笑うと、脹相は少しだけ目を逸らした。
表情はいつもと変わらない。
けれど、その胸の内では別のことを考えていた。
――二人で出かける。
それだけで、妙に嬉しかった。
同居しているとはいえ、普段は家の中で一緒に過ごすことが多い。
こうして二人で街へ出かけるのは初めてだった。
「じゃあ準備してくるね」
「ああ」
私が部屋へ戻る。
脹相は一人になると、何となく自分の服装を確認した。
「……」
別に何でもいいはずなのに。
少しでも変に見えない方がいい。
そんなことを考えてしまう。
――ただの買い物だ。
そう自分に言い聞かせながら、いつもより少しだけ身なりを整えた。
「お待たせ」
「……ああ」
振り返った脹相は、一瞬だけ固まった。
「どうしたの?」
「いや……何でもない」
「変?」
「変ではない」
「じゃあ何?」
「……似合っている」
「え?」
「服が」
それだけ言って、脹相は先に玄関へ向かった。
耳が少し赤い。
私は笑いながら、その後を追った。