第33章 迷子の子ども
「脹相?」
「……なんだ」
「この子のお母さん探さないと」
「分かっている」
返事はいつも通り。
ただし、妙に低い。
「……どうしたの?」
「別に」
明らかに何かある。
けれど今はそれどころではない。
二人で男の子を連れて、周囲を見回す。
「お母さーん!」
それっぽい人がいないかと声を大きくして周りを見渡す。
「ママ、こっち!」
「うん?」
男の子があなたの手を引っ張る。
そのまま、あなたの手をぎゅっと握った。
「……」
隣を歩いていた脹相が、その手を見る。
そして、あなたを見る。
「……脹相?」
「なんでもない」
「本当に?」
「ああ」
どう見てもなんでもなくない。
しばらく歩いていると、遠くから女性の声が聞こえた。
「――○○!」
男の子が顔を上げる。
「あっ!」
「お母さん?」
男の子が走り出す。
「ママ!」
母親のもとへ駆け寄る姿を見て、あなたもほっとした。
「よかった……」
母親が何度も頭を下げる。
「本当にありがとうございました」
「いえいえ。無事でよかったです」
あなたが笑う。
男の子も安心した顔で笑っている。
「ママ、ばいばい!」
「うん。ばいばい」
手を振る。
その隣で、脹相も小さく手を上げた。
「……さようなら」
男の子が母親と一緒に去っていく。
二人だけになる。
「なんか、大変だったね」
「……ああ」
「でも可愛かったなぁ」
「……そうだな」
「脹相?」
「……何でもない」
またそれ。
あなたは脹相の顔を覗き込む。
「さっきから変だよ」
「変ではない」
「じゃあ、どうしたの?」
「……」
脹相は黙り込んだ。