第3章 脹相〜雷〜
やがて雨音が少しずつ弱くなっていった。
私は安心して、脹相の肩に頭を預ける。
「……眠い」
「ああ」
「ちょっとだけ、このままでいていい?」
「好きなだけいろ」
脹相の声が、すぐ近くから聞こえる。
その声に安心して、私は目を閉じた。
しばらくすると、眠気が強くなっていく。
最後に感じたのは、頭を撫でる優しい手だった。
「……おやすみ」
脹相の小さな声。
私は眠りに落ちる直前、その声に微笑んだ。
そして私が眠ったあと。
脹相はしばらく動かなかった。
肩に寄りかかる私を起こさないように、静かに座っている。
手はまだ繋いだまま。
窓の外で、遠く雷が鳴る。
けれど今度は、私が怯えることはない。
「……怖くないように、俺がいる」
眠っている私には聞こえないほど小さな声で、脹相は呟いた。
本当は。
雷よりも、自分の心臓の音のほうがずっとうるさい。
好きだ。
そう思う。
こんなふうに頼られるのが嬉しい。
自分の隣で安心して眠ってくれることが、たまらなく嬉しい。
けれど、今はまだ言わない。
ただ、もう一度だけ。
眠る私の頭を、そっと撫でる。
「……朝まで、ここにいる」
それは約束だった。
恋人ではない。
まだ名前のついていない関係。
それでもこの夜だけは。
私は脹相の腕の中で、安心して眠ることができた。