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呪術廻戦〜脹相〜

第32章 視線を隠しても



「……」

「脹相?」

「なんだ」

「今、私のどこ見てた?」

「……!」

 脹相は固まった。

「見ていない」

「嘘」

「……」

「絶対見てた」

「……見ていた」

 観念したように答える。

「どこ?」

「……」

 脹相は黙り込んだ。

 言えるわけがない。

 すると私が少し笑った。

「もしかして……」

「……なんだ」

「唇?」

「……」

 沈黙。

 それが答えだった。

「……脹相、顔真っ赤」

「見るな」

「今、私の目隠してるのに?」

「……」

「ふふ」

 私が笑う。

 脹相はますます困った顔になる。

「……目を隠したのは失敗だった」

「どうして?」

「お前の視線からは逃げられたが……」

 そこで言葉を止める。

「今度は、俺が別のところを意識してしまう」

「……」

 私まで恥ずかしくなる。

「じゃあ……手、離す?」

「……いや」

「え?」

「もう少し、このままで」

 脹相の声は小さかった。

 私はそっと、その手に触れる。

「じゃあ、もう少しだけ」

「ああ」

 目は見えない。

 それでも、脹相がすぐそばにいることは分かる。

 手の温もりも。

 少し速くなった呼吸も。

 そして、何より。

 目を隠した本人が、一番恥ずかしそうにしていることも。

 脹相は思う。

 ――俺は一体、何をしているんだ。

 彼女の視線が恥ずかしくて目を隠したはずなのに。

 今度は、その唇を意識してしまっている。

 しかも、手を離すことさえできない。

「……脹相」

「なんだ」

「顔、見たい」

「……」

「手、どけて?」

 脹相は迷った。

 けれど、ゆっくり手を離す。

 そして目が合った。

「……」

「……」

 二人とも、すぐには何も言えなかった。

 結局。

 視線を隠しても。

 目を合わせても。

 どちらにしても、脹相は私を意識してしまうらしい。

 ただ一つ違うのは――

 今度は、私も同じくらい胸を高鳴らせていたことだった。
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