第30章 脹相〜お風呂の停電〜
「……ちょっと、そっち向いてて」
「ああ」
脹相がすぐに背を向ける。
「絶対見ないでね」
「見ない」
「ほんとに?」
「お前が嫌がることはしない」
その言葉に、胸が少しだけ温かくなる。
私は手探りで脱衣所へ向かおうとした。
「……よし」
一歩。
もう一歩。
その瞬間――
「きゃっ!」
足が滑った。
「危ない!」
脹相が振り返る。
身体が倒れるより先に、腰を強く抱き寄せられた。
「……っ」
気づけば、私は脹相にしがみついていた。
腕は彼の首に回り、身体はぴったりと胸元に収まっている。
「…………」
「…………」
時間が止まったみたいだった。