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呪術廻戦〜脹相〜

第29章 脹相〜温泉旅行〜


「……」

 しばらくして。

 あなたの頭が、そっと脹相の肩へ寄りかかった。

「……!」

 脹相の身体が一瞬だけ強張る。

「ごめん。重い?」

「いや」

 脹相はすぐ答える。

「そのままでいい」

「ほんと?」

「ああ」

 あなたは安心したように目を閉じる。

「じゃあ、少しだけ」

「……ああ」

 脹相は天井を見る。

 心臓がうるさい。

 あなたには聞こえてしまいそうなくらい。

 けれど。

 あなたは何も気にしていない。

 ただ暖かいから。

 眠りやすいから。

 それだけなのだろう。

「……」

 脹相はそっと息を吐く。

 そして。

 あなたがずり落ちないように、肩へ手を添える。

「……」

 触れた瞬間。

 あなたが小さく身じろぎする。

「ん……」

「……大丈夫か?」

「うん……」

 眠そうな声。

 そのまま。

 あなたは脹相の胸元へ少し近づいた。

「……」

 脹相は完全に固まる。

 今まで何度もあなたを支えた。

 頭を撫でたこともある。

 けれど。

 こうして二人きりの夜に。

 こんなに近い距離で、あなたの体温を感じるのは初めてだった。
「……」

 手をどうすればいいのか分からない。

 動かすと起こしてしまいそうで。

 かといって、このままなのも意識してしまう。

「……困ったな」

 小さく呟く。

「ん……?」

「何でもない」

 あなたはもう眠りかけている。

 そして。

 完全に眠ったあと。

 脹相はしばらく動けなかった。

「……」

 目の前にある寝顔。

 穏やかな呼吸。

 自分の肩に預けられた重み。

 その全部が愛おしく感じてしまう。

「……」

 付き合っていない。

 だから。

 これ以上は何もしない。

 ただ。

 あなたが寒くないように。

 起こさないように。

 そっと布団を整える。

 そして。

 ほんの少しだけ。

 あなたの頭を撫でる。

「……おやすみ」

 聞こえるはずのない声で呟く。

 あなたは眠ったまま。

 それを確認してから。

 脹相はようやく目を閉じる。

 けれど。

 眠りにつく直前まで。

 胸の鼓動だけは、なかなか静まらなかった。
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