第29章 脹相〜温泉旅行〜
ある日の夕方。
ポストを確認していた私は、一通の封筒を手にリビングへ戻ってきた。
「脹相」
「ああ」
「これ見て」
私は封筒を差し出す。
「何だ?」
「なんか当たった」
「……何が?」
「温泉旅行」
「……」
脹相が封筒を見る。
それから私を見る。
「温泉旅行?」
「うん。二名様」
「……」
「応募したの忘れてたんだけど、当たったみたい」
私は嬉しそうに封筒を振る。
「すごくない?」
「ああ」
脹相は頷く。
「よかったな」
「うん」
けれど。
私はそこで少し考えた。
「……二名なんだよね」
「ああ」
「どうしよう」
「誰かと行けばいい」
「そうなんだけど」
私は脹相を見る。
「脹相、一緒に行かない?」
「……俺と?」
「うん」
脹相が黙る。
「嫌?」
「いや」
返事は早かった。
「嫌ではない」
「じゃあ行こうよ」
「……分かった」
こうして。
私たちは温泉旅行へ行くことになった。