第28章 脹相〜Tシャツのその後〜
「でも、なんで脹相のTシャツ?」
「着やすいし、落ち着くから」
「落ち着く?」
「うん」
私は何気なく答える。
「脹相の匂いがするから」
「…………」
悠仁が完全に停止した。
「……匂い?」
「うん」
「脹相の?」
「そう」
「……」
悠仁はゆっくり脹相を見る。
脹相は珍しく、目を逸らしていた。
「脹相」
「何だ」
「顔赤くない?」
「気のせいだ」
「いや絶対赤いって!」
「……」
脹相は黙る。
悠仁はしばらく二人を見比べて。
「……付き合ってないんだよね?」
「うん」
私が答える。
「付き合っていない」
「……」
悠仁はさらに頭を抱えた。
「じゃあ何でそんな距離感なの!?」
「そんなに?」
「そんなにだよ!」
私は首を傾げる。
「でも、脹相がいいって言ってくれるから」
「脹相……」
悠仁の視線が脹相へ向く。
「お前、何とも思わないの?」
「……」
脹相は少し黙った。
それから。
「本人が気に入っているなら、貸すだけだ」
「……」
「それに、家にいるときくらい、好きな服を着ればいい」
「……」
私は嬉しくなって笑う。
「ありがとう」
「ああ」
悠仁はその様子を見て、しばらく黙っていた。
そして
「……まあ、脹相がいいならいいけど」
「うん」
「でもさ」
「何?」
「そのTシャツ、脹相が普段着てるやつだよね?」
「そうだよ」
「……」
悠仁がまた脹相を見る。