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キセキ

第4章 僕を想う人


その日、放課後一人で教室に残っていた。
 帰りの準備に手間取ったのか、
 何か用事があったのか。
 とにかく、最後の一人になってしまった。

 そこに、何故か先生が来た。
 担任の先生。

「元気か?」

先生は、ボクに言った。
「フツウ」
ボクは応えた。

「そうか・・・。なんかな、ずっと、気になっていてな。
 お前、元気ないなって。」

ボクの瞳孔はきっと1mmくらい大きくなっただろう。
「何かあったら、話してくれよ。何かできるかもしれない。」

ひとりになるな
と。

その言葉にどう応えたか覚えていない。

でも、ボクは思った。
『ああ、キセキだ・・・』と。

ボクは今まで、周囲の人は、
ボクが目の前にいないときには
 決してボクのことなど思い出しもしない、
誰の心にも
 ボクは残っていない
誰の目にも
 ボクは映っていない

でも、この人は、
 ボクが目の前にいないときでも
 ボクのことを考えくれてたんだと、
そう思えた。

誰かの中に、ボクが残っている
他の人にとっては
 大したことではないかもしれないけど、

僕にとってそれは、
 キセキにも等しかった。

冷え切っていた体が
 暖かく感じられて、
 枯れた涙が、また、心から
溢れそうになった。
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