第22章 冬支度
10月上旬。秋の終わりに差し掛かり、領内は寒い季節に備えて慌ただしくなっていた。
農家、職人、商家、貴族に今年も分け隔てなく厳しい冬が来る。寒くなり雪が深くなると簡単には物事が進まなくなってしまう。毎日追い立てられるように、各家庭や村々で設備の修繕や備蓄の確保が行われている。
コズロフ家の邸宅も例外ではなかった。
「奥様。屋根の補修をしていた者が高所から落ちてしまったようです。幸い大事には至っておりませんが、予定より作業が遅れる見込みです。追加で人員を要請されますか?」
「使用人部屋の寝具のいくつかがかなり傷んできております。新しいものに入れ替えてよろしいでしょうか」
「今年の収穫があまり芳しくなかった村や未亡人世帯、病人が発生した家庭などについて、こちらにまとめておきました。お手隙の際にご確認と支援の検討をお願い致します」
「慈善物資の配給はいつ頃に致しましょうか? 奥様も現地に来てくださると領民たちの励みになるはずです」
家令に女中頭、領地管理人……。指示を仰ぎに、サプフィールの元には入れ代わり立ち代わり色んな相談が来る。
皆、冬を万全に越すために神経を尖らせている。見当違いな提案をしないようにと、サプフィールもまたそれなりの重圧を感じていた。
「……ふぅ」
そんな日々を過ごしていたある日の夕方。冬の期間の献立や来客用の備蓄、あとは保存食の内容を料理長と確認し終えたサプフィールは短く溜め息を吐いた。
家内の管理を本格的に任されるようになったサプフィールにとって、これが初めての冬支度だった。今が人生の中で一番忙しい。
朝から晩まで誰かと何かしらの用事をこなす毎日にヘトヘトになっていた。
「(スヴェトザール様は、これを今まで全部お一人で捌いていたの……?)」
夕食前の着替えをするために自室へ戻りながら、そんなことを思う。
今年から自身に伯爵夫人として割り振られている仕事の数々は毎年スヴェトザールが担当していたものらしい。
道理であんなに仕事に追われていたわけだ。伯爵と夫人の仕事全部自分一人で回し続けていたのだから。
「(私も頑張って……スヴェトザール様の負担を減らさなきゃ)」
すっかり色褪せた庭を2階の廊下から流し見ながら、サプフィールは自室へと戻っていった。