第20章 再訪
晩夏。サプフィールは4カ月ぶりにザイツェフ家の邸宅を訪れていた。
「カストーリヤ嬢、このたびはご婚約おめでとうございます」
「ありがとうございます。ようこそお越しくださいました」
今回も玄関先で出迎えたカストーリヤにサプフィールが嬉しげに挨拶をする。
「お茶とお菓子を用意しております。こちらへどうぞ」
応接間へ通され、向かい合って座る。
テーブルの上には菓子類やティーカップが綺麗に並んでいる。ケーキスタンド越しに見えたカストーリヤの顔は、どこか浮かないものだった。
「あの、こちら……私からのお祝いの品です。使ってくださると嬉しいです」
サプフィールは持参した贈り物をカストーリヤに渡す。
「ありがたく頂戴いたします。開けてみてもよろしいですか?」
「もちろんです。お気に召すものを選べているといいんですが」
カストーリヤが梱包を丁寧に解き、箱を開ける。上等なつけペンのセットが収められている。
金製のペン先、小型のインク壺。ペン置きに卓上用のケース。手に取ると、貝細工の施された瑠璃色の軸が光を受けて静かに艶めいた。
「とても美しいですね」
「よかったです。これから御家を継がれるカストーリヤ嬢の助けになればと思い、選びました」
カストーリヤの言葉に安堵しながらサプフィールが笑う。
「わたくしの為に……。感謝いたします。大事に使わせていただきますね」
そう言ってカストーリヤは慎重に箱を閉じ、傍らに置いた。
それからしばらく婚約者についてカストーリヤから聞きながら過ごす。紅茶を飲みながら、ふとサプフィールが訊いた。
「そういえば……ポルーシャ嬢は今日はいらっしゃらないのですか?」
この間は遅れて登場したものの今回は来る気配もなく、カストーリヤもポルーシャについて一切触れない。
何気なく疑問に思って口にすると、カストーリヤの表情が曇った。笑みを崩してはいないものの、なぜだか酷く疲れているように見える。
「あ、あの……」
訊いてはいけないことだったか。思いもしなかったカストーリヤの反応にサプフィールは少し緊張する。