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愛しのサプフィール

第18章 指輪


夏の中頃。昼食後、自室にいたサプフィールは応接間へ来るようにとの言伝を従僕から受けて部屋を出る。
「(なんかあったっけ……)」
階段をトントンと降りながら考える。
そういえば、何日か前に夫からここ数日間の予定について聞かれた。何の予定もない今日を狙ったんだろうか。
サプフィールはそれを思い出したものの、スヴェトザールからは特に何も聞かされていなかった。
目的を知らないままサプフィールが応接間に入ると、そこにはスヴェトザールと商人らしき男がテーブルを挟んで対面していた。
「サプフィール。どうぞ隣へ」
入ってきたサプフィールに気が付いたスヴェトザールがソファから腰を浮かせ、1人分を開けて座り直す。
「お待たせしました。あの、そちらは……?」
スヴェトザールの向かいに座る男を見ながらサプフィールが近寄る。見覚えがない。屋敷を頻繁に出入りしている業者ではなさそうだった。
「宝石商です。貴方の指輪を注文するために呼びました」
「奥様。本日はよろしくお願い致します」
商人が立ち上がり、恭しくお辞儀をする。サプフィールも会釈を返しスヴェトザールの隣に座った。
「指輪ですか……」
「ええ。貴方の誕生日が近いので、贈り物の1つにしようかと」
スヴェトザールが言いながら見本帳を差し出す。様々なリングの意匠が何ページにも渡って描かれている。
「失礼致します、奥様」
指の寸法を測るためのいくつもの金属の輪を持った商人がサプフィールのすぐ傍に跪く。サプフィールは促されるままに左手を差し出した。
「中指でよろしいでしょうか?」
「は、はい……」
宝石商は丁度いい輪を1つ選び、席へ戻ると帳面に寸法を書き留める。
サプフィールが見本帳から好みに合うデザインを探していると、目の前に研磨済みの裸石がいくつも乗せられたトレイが出された。
青系の石のカット面が、窓から差し込む光を受けて照り照りと輝いている。
「貴方が来る前に、私がある程度選別をしました。いずれも高品質のものです」
「どれも綺麗ですね……全部サファイアですか?」
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