第16章 丘
茎を持ってクルクル回しつつ、サプフィールは改めてシロツメクサの花壇を眺める。
蝶やミツバチが花にとまって中を弄っているのが見えた。
「そういえば……シロツメクサも蜜があるんですね。吸ったことはありますか?」
同じく虫に目を留めたスヴェトザールがサプフィールに訊く。
「ええ。ですが、あんまり甘さは感じなかったですね。吸うのを楽しめるような量もないですし、毒性もあるらしいので」
少し残念そうに言いながら、サプフィールが小花を1つ千切って口に運ぶ。
その様子を見ていたスヴェトザールが呆気に取られたように呟いた。
「……毒?」
それからサプフィールの手からシロツメクサをさっと奪い、口に含んでいた小花もそっと摘み取る。
「シロツメクサは撤去します」
「えっ、なぜ」
「貴方を危険に晒すわけにはいきませんから」
きっぱりと言い、花壇に厳しい視線を送るスヴェトザールにサプフィールは慌てる。
「毒といっても、あなたの考えているようなものではありません……生で大量に食べない限りは問題ないんです。そして、美味しくないのでそうなる量を食べることはまず無いです」
排除しなければならない程の危険などない。
せっかく自分のために植えてくれたものを、自分の失言で撤去させてしまうのは避けたかった。
「……では植えたままにしますが、決して食べないように」
「ええ。約束します」
心配そうに見つめるスヴェトザールに苦笑いを向けながら、サプフィールは安堵の溜め息を吐いた。
「そもそも……貴方はなぜ、観賞用の草花を食べるようになったのですか?」
「それは、えっと……」
スヴェトザールに訊かれたサプフィールは気恥ずかしげに一瞬ソーニャに振り返り、また向き直る。
「お……幼い頃、咳止めで与えられたスミレの砂糖漬けが美味しくて……花弁も食べれるんだって思って。それからは目につく植物が美味しいやつかどうか知りたくなってしまって……」
「なるほど。それで植物図鑑を愛読していたんですね」
「あ、いえ……それは……」
顔を赤くしながらサプフィールが首を横に振る。