第16章 丘
「何をしているんですか?」
スヴェトザールが何やら始めたサプフィールの手元を覗き込む。
「花で冠を作るんです。たしか、こうやって……あれ……?」
去年の夏至祭でソーニャと作って以来だった。作り方すら忘れてしまっていたようだ。
「花冠ですか。いいですね」
そう言って、スヴェトザールも近くのシロツメクサを摘む。悪戦苦闘するサプフィールの手元を見つつ、真似して編み始めた。
「……こういう感じですか?」
「えっ、上手ですね。あとは輪にして完成です」
あっという間に一束を編んだスヴェトザールが始めと終わりの部分を結び、出来たばかりのシロツメクサの花冠をしげしげと見つめる。
「作ったことあるんですか?」
「いいえ、貴方の手つきから何となく……。どうぞ」
そのままサプフィールの頭に花冠を載せた。頭より少し大きめに仕上がっていて、斜めに掛かって留まる。
「私も作ってあげたいんですが……ダメそうです」
5本ほど絡まり合ったシロツメクサは花弁が崩れ、茎は折れたり萎れたりしていた。
「いいですよ、それを載せても」
言いながらスヴェトザールが自身の頭を指差す。
「さすがにそれは……恥ずかしいです」
苦笑いしながらサプフィールは新しいシロツメクサを2本千切り、1本をスヴェトザールのこめかみに差し、もう1本は左手の薬指に結びつけた。
「不器用なので。これで勘弁してください」
はにかみながらサプフィールが言う。
「ありがとうございます。私もしたいので……左手をこちらに」
「ど、どうぞ」
少し頬を赤らめ、サプフィールがスヴェトザールに手を差し出す。サプフィールがしたのと同じように1輪のシロツメクサが結わえ付けられた。
「手が……草の汁まみれです」
シロツメクサで散々遊んだ後、サプフィールが両手の匂いを嗅ぎながら言う。
「戻る前に川で手を洗いましょうか」
スヴェトザールがサプフィールに手を差し出し、立ち上がらせる。
青草の匂いを漂わせながら、2人は斜面を下って小川の方へ向かった。