第4章 因縁の残火
「刀が折れてたり、まともに闘えないの分かってるのに!それでも真っ先に駆けつけたんだよ!それを…!」
青空の顔が歪む。
「…そんなの、ボクが頼んだわけじゃない」
声が小さくなる。
「勝手に闘ってるだけです…」
その言葉に操の怒りが跳ね上がる。
が…。
ガシッ。
剣心の手が、操の肩をそっと押さえた。
力ではない。
止めるための静かな手。
そして剣心は、青空へ穏やかに笑いかける。
「青空さん…拙者の弟があの男を引きつけているうちに、伊織を助けてくれぬか」
「……」
青空の喉が鳴る。迷いが目に浮かぶ。
翁も一歩、前に出た。
「青空くん。わしも一応この娘の義父じゃ。子を最優先に思う気持ちは分かる」
一拍置き、視線を斗亜へ向ける。
「じゃがな…緋村くんと斗亜くんが“勝手に闘ってる”んじゃない」
翁の声が、静かに重くなる。
「守ろうとしてるんじゃ。子を。未来を。そして、人が人でいられる場所を」
ドガッ。
斗亜の体が揺れ、張の一撃を受けて片膝をつく。
砂が跳ねた。
張は鼻で笑う。
「往生際が悪いなあ…見てて惨めやで、アンタ」
薄刃が、ぴたりと斗亜の喉元に寄る。
「その目、ごっつムカつくわ。状況分かってへんのか?絶体絶命やで?たかがガキ一人に命張ってる場合やない。オイ」
斗亜は、傷だらけの体をゆっくり起こした。
痛みが走る。だが、足を引かない。
「俺は昔…新時代のために、大勢の人を斬った…」
張が笑う。
「なんや自慢話かいな。この期に及んで過去の栄光にすがるんは見苦しくて最高や」
斗亜は張を見たまま、言葉を続ける。
声は低い。
だが一語一語が、揺るがない。
「死闘と、償いきれない流血の果てに新時代を迎えて十年。死闘も流血も知らず、優しい家庭で…健やかに育つまで」
斗亜は視線を伊織へ向け、すぐ戻す。
「この時代は、ようやく平和の顔を見せ始めた。貴様にとってはただのガキでも、俺には、かけがえのない“新時代の申し子”だ」
息を吐く。
「命にかえても伊織は…青空夫妻の元へ、無事に帰す」
そして、はっきりと告げた。