第4章 因縁の残火
青空が青ざめたまま、言葉を吐き出す。
「薄刃乃太刀は…刃の強度を保ったまま極限まで薄く鍛えて、剣先だけ僅かに重くしてあるんです」
震える指が、張の刀を指した。
「だから、手首を返すだけで…刃の軌道が“勝手に”変わる。避けた動きに合わせて、追いかけてくる」
息を呑み、さらに続ける。
「紙一重でかわすほど…“次の刃”が当たりやすくなる。足を削られたら、もう…」
張は愉快そうに、拍子を取るみたいに肩を揺らした。
「観客も増えてきたみたいやし、そろそろ“くらいまっくす”といきまっか」
ちら、と視線を剣心へ投げる。
「あっちの人斬り抜刀斎も倒さなアカンしなぁ…我流“大蛇”受けてみい」
薄刃が、すっと低く構えられた。
地を這う。
蛇みたいに、音もなく、間合いが詰まる。
“速い”じゃない。
気づいた時には、もうそこにいる。
斗亜は踏み込めない。
避けられない。
なら、受けるしかない。
刀を合わせた、その瞬間。
キィィィン!!!!
金属が悲鳴を上げる。
斗亜の刀が弾かれ、弧を描いて闇へ飛んだ。
「何っ!?」
斗亜の目が見開かれる。
張が、満足そうに舌を鳴らした。
「腕が鈍っとんで!でもよう防ぎよった!けどまだ終わりやないで!」
薄刃がさらに襲う。
避けようとした途端、足の傷が焼けるように痛み、踏ん張りが崩れる。
「斗亜ー!!!」
操の叫びが裂ける。
間に合わない。
鞘と帯を結っている下げ緒を咄嗟に緩める。
ガッ!!!!
滑り込んだ“鞘”が、薄刃を受け止めた。
硬い衝突音。
刃が止まる。
斗亜は片膝をつきながら、歯を見せて笑う。
「…こんな奴に負けたら、人斬り抜刀斎の名が泣いちまうぜ」
血の滲む笑み。
だが目だけは、冷静に張を見ていた。
青空の声が、焦りに揺れる。
「父の刀は諦めよう…今は伊織を助けて、一刻も早くここから離れるんだ…!」
張の意識が斗亜に向いている。
今なら、伊織を…。
「緋村たちを囮にするわけ?」
操が、噛みつくように青空を睨んだ。