第4章 因縁の残火
「いけない!」
青空が男の胴を見た途端、顔色を変えた。
声が震える。
「あの男が胴に巻いてるもの…あれは、赤空が改良に改良を重ねて作り上げた後期型の殺人奇剣です!」
「「「なっ!?」」」
「十本刀“刀狩”の張…こっからが真骨頂やで!」
男――張が、楽しそうに笑った。
その笑顔が、気持ち悪いほど無邪気だ。
「気をつけて斗亜!そいつまだ刀を隠し持ってる!!」
操の叫びが飛ぶ。
「ほな…いくで」
ビュオッ。
空気が唸った。
斗亜が気づいた時には、背後にすでに切っ先がある。
速さだけじゃない。
“ありえない角度”で、刃が回り込んでくる。
「どやっ!これがわいの一番の愛刀!殺人奇剣“薄刃乃太刀”」
月光に浮かぶ刃は、異様だった。
薄い。
薄すぎる。
しかも――しなる。
「なんだ…あのしなり方…」
剣心の目が見開かれる。
刃が、まるで生き物のように軌道を変える。
避けたはずの場所へ、追いかけるように“伸びて”くる。
斗亜の足が、反射で地を蹴った。
薄刃の切っ先は、すでに“そこ”にいた。
「斗亜!」
叫びと同時に、斗亜は身を捻った。
刃が頬を撫でる。
紙一枚いや、息ひとつ分。
右頬に、熱が走る。
遅れて、血が一筋、じわりとにじんだ。
「ダメです!それを紙一重で避けちゃ!」
斗亜が唇の端で舌打ちするより早く、青空の声が飛んだ。
「はっ!?」
意味が分からず、斗亜が視線を青空へ飛ばした。
張が、口角を吊り上げた。
「ほらな」
指先で何かを払うみたいに、刃を“返す”。
スッ。
薄い音。
そして次の瞬間、右足に鋭い痛みが走った。
「ぐっ!?」
太ももへと刺さり、焼けるような痛みが走り、力が抜ける。
「斗亜!」
剣心の声が飛ぶ。
張は嬉しそうに肩を揺らした。
「狙いバッチリや!これでもうチョコマカ動き回れへんやろ」
「卑怯者め…赤空さんって、すげぇ刀匠だったんだな…」
斗亜は歯を食いしばり、痛みを呼吸で押し殺す。
だが足は正直だ。
踏ん張ろうとするたび、傷が脈を打つ。