第4章 因縁の残火
地面に座り込み、膝に肘をつき、悔しそうにうつむいている。
「御神刀として造られ、一度も鞘から抜かれずに納められた。父の刀の中で…唯一、血に染まらなかった一振りだったのに…」
その呟きに、操が息を飲む。
斗亜も、眉の奥がきゅっと痛んだ。
もう一人、女性の声。
家族だ。
青空を支える側の声だった。
「でも…あなたが黙っていたら、伊織はどうなっていたか…義父上の名誉も大事だけど、今は伊織の命の方が…」
青空の肩が震えた。
「馬鹿…お前は、あの男の目を見ていない」
青空の声は、怖さを押し殺していた。
怒っているのに、怒りが震えに変わっている。
「あれは“刀が好きな”目じゃない…“刀で人を斬るのが好きな”目だ」
ぞくり、と空気が冷える。
「…あの男が父の刀を手にすれば、必ず試し斬りをする」
青空は拳を握りしめる。
「くそ…なんでだ…もう刀は造らないと決めたはずなのに…」
ぽろり、と。
涙が落ち、土に吸われた。
その瞬間だった。
「…青空さん」
斗亜と操が、物陰から姿を現した。
「あなたたち…昨日の…」
驚きに目を見開いた青空に、操が一歩踏み込む。
「事情を聞かせて!」
斗亜は短く言う。
「早く。時間がねぇんだろ?」
青空は唇を震わせ、やがて覚悟したように頷いた。
そして二人に、急いで事情を説明する。
話を聞き終えた斗亜の目が、すっと鋭くなる。
「操。すぐ兄貴に知らせろ。俺は先に行って止める!!」
「分かった!」
操は踵を返して走った。
斗亜も、迷いなく駆け出す。