第4章 因縁の残火
「情報によれば、赤空には一人息子がおってな。すべての技術を叩き込まれ、次代を担う刀匠と期待されておった」
翁は紙を見ながら続ける。
「しかし時代は明治。刀の需要は激減し、刀匠では食えず…今は包丁や鎌など生活用具を打って暮らしているらしい」
「名は新井青空。この男なら、新たな逆刃刀を打てるかもしれん」
やがて一行は、店へ辿り着く。
「ごめんくださーい」
「ふあい」
のぞいた店先。
そこにいたのは、小さな男の子。
ちょこんと立っている。
「…青空?」
剣心が思わず目を丸くし、指差す。
「絶対違うだろ…技術を全部この年で叩き込むか?普通…」
斗亜が半ば呆れたように息を吐く。
奥から母親らしき女性が現れ、丁寧に頭を下げた。
「いらっしゃいませ。何をお求めでしょう?」
剣心は静かに言う。
「包丁を一本いただきたいのでござるが…試し斬りをしてもよろしいでござるか?」
「はい、どうぞ」
剣心は懐から一本の大根を取り出した。
「兄貴…その大根、どこから出したんだよ!?」
斗亜と操、翁が揃って目を見張る。
シュパッ。
一瞬の閃き。
大根の断面は荒れていない。繊維が潰れていない。
切り口を合わせると吸い付くように、ぴたり。
「戻し斬り…か。初めて見た」
翁が感嘆を込めて呟く。
「断面の組織を一切潰さず斬ることで、再び元に戻せる。名刀と達人の腕が揃って、ようやく成立する高度な技…それを包丁でやってのけるとは」
翁の目が細くなる。
「さすが赤空の息子だな…」
斗亜は包丁を手に取り、刃を光へかざす。
「…すげぇ。刃が“立ってる”のに、嫌な殺気がねぇ。道具としての、芯がある」
「すごい!!これだよ、これ!!」
操が一人で大きく頷き、勢いに乗る。
「新しい逆刃刀は新井青空の作で決まりだね!!」
「御内儀…無理を承知でお願い申し上げる」
剣心は真剣な面持ちで深く頭を下げた。
「青空殿に、どうか一度お会いさせていただけぬでござるか。拙者、ぜひ青空殿に刀を一振り打っていただきたいのです」
「はぁ…でも…」
女性は幼子を抱いたまま困惑し、視線を落とす。