第4章 因縁の残火
「そうでござるな…」
剣心も同時に頭を抱えた。
操がそっと二人に寄り、声を落とす。
「ここだけの話ね。爺や、幕末は隠密御庭番衆・次期御頭の最有力候補だったんだって。でも“これからは若い者の時代じゃ”って蒼紫様を推薦して、自分は京都探索方に回ったの」
一拍置いて、肩をすくめる。
「…まぁ今はちょっとイカれたお爺ちゃんだけど」
翁が咳払いひとつ。
「それと、頼まれてた人探しの件。昨日のうちに手配しておいたぞ」
「人探し?」
操が首を傾げて剣心を見る。
「操殿には関係ないでござるよ」
剣心がさらっと流した瞬間。
「どーしてあんたはいつもそうなのよ!!」
操が飛びつき、両頬をむにっとつねり上げる。
「お、おろろ…!」
剣心の声が情けない音になった。
その時。
「翁、これを」
黒が影のように現れ、一通の手紙を差し出した。
翁は受け取って、目を走らせた。
次の瞬間、表情が変わる。
「…操、すまん。白べこはまた今度じゃ」
空気が、きゅっと締まった。
「緋村君…探しておった人物のうち一人の消息がわかった。いや…正確には、その“死”が確認された」
剣心のまぶたがわずかに揺れる。
「逆刃刀を打った刀匠、新井赤空は…八年も前にこの世を去っておる」
沈黙が落ちる。
「信頼している刀匠が亡くなっているとなると…この闘い、ますます厳しくなるな…」
斗亜が低く呟く。
視線は遠く、胸の奥で何かを計るようだった。
翁は続ける。
「新井赤空は幕末、維新志士たちの間で名を馳せた超一流の刀匠だ。だが作を重ねるうち、“斬れる刀”から“殺せる刀”へと探究を深めすぎた。刀匠界からは異端視されておった」
「その“殺せる刀”を追い求めた人が、不殺の逆刃刀を作ったの?」
操が不思議そうに首を傾げる。
「なんか、ややこしいね」
翁はうっすら笑った。
「人の一生というものは、外から見れば矛盾だらけに映るものじゃ。のう、緋村君」
翁の視線が剣心へ向く。
だが剣心は答えない。
ただ、歩みを止めず前へ進む。