第4章 因縁の残火
戦力の話ではない。
巻き込みたくない、それが本音だ。
だが翁は、そんな迷いを断ち切るようにビシッと二人へ手を突き出した。
「嫌だと言っても無駄じゃ。何せ儂は操の育ての親じゃからな~」
にやり。
無邪気さと、頑固さの混ざった笑み。
剣心と斗亜の脳裏に同時に浮かぶ。
筋金入りの“我が道”。
「なんだか知らんが、すげぇ説得力だな…」
斗亜が小さく呟くと、翁は嬉しそうに頷いた。
「じゃろう!じゃろう!」
剣心は観念したように息を吐く。
「それでは…お言葉に甘えさせていただくでござる。翁殿の情報網を使い、人探しをお願いしたい」
翁の眉が上がる。
「新井赤空と…比古清十郎。この二人を、出来るだけ早く…」
二人目の名が出た瞬間、斗亜の表情がわずかに硬くなる。
まぶたが細まり、視線が一瞬だけ鋭く沈んだ。
翁はそれを見逃さず、何か言いかけた。
だが、今は飲み込んだ。
ガラッ。
「起きろー!緋村兄弟!朝だぞー!!」
勢いよく襖が開く。
操の声が部屋に飛び込む。
「…って、なんだ。もう起きてたの」
既に身支度を終え、静かに座っていた二人を見て、操は肩を落とした。
「準備ができているなら出発じゃ。緋村君」
翁が当たり前のように言う。
「おろ?」
剣心が間の抜けた声を漏らすと、翁は扇子も持たずに堂々と続けた。
「京都も十年で随分様変わりした。今日は一日かけて案内しよう。昼は京風牛鍋の“白べこ”じゃ」
「翁さん、ちょっと待ってください!」
斗亜が眉を寄せ、声を低くする。
「俺たちが昼間から出歩くのは危険だ。いつ志々雄に気づかれるか…」
翁はあっけらかんと肩をすくめた。
「相手は志々雄じゃ。逃げようが隠れようが、いずれ見つかる」
「ですが…」
「緋村君」
翁は剣心へ視線を据える。
まるで“試す”ように。
「君はこの国の人々のために志々雄と闘うのじゃろ?ならば常に正々堂々と構えておれ。それが“正しき男”の流儀じゃ!」
「なんか言いくるめられた気がする…」
斗亜がぼそりと呟く。