第4章 因縁の残火
「そうでしたか。般若たちは命を落とし、蒼紫様は行方知れずに…」
翁の声は、いつもの勢いが少し削がれていた。
言葉にした瞬間、胸の奥に沈むものがあったのだろう。
翁は短く頷く。
「うむ…それが現状じゃ。その状況なら…しばらくは内密に動いた方がよさそうだな…」
斗亜は視線を伏せた。
初めて聞く事実が、思った以上に重い。
“行方知れず”という響きは、死よりも残酷に胸へ残る。
「うむ。その判断が賢明じゃろう」
翁は一拍置き、次に剣心へ目を向けた。
その視線は穏やかではあるが、隠しきれない鋭さを宿している。
「ところで緋村殿…十年もの間、京都に姿を見せなかった君たちが、今になって現れた。その理由は…」
翁の声が低くなる。
「…やはり君の後継者。志々雄真実が絡んでおるのではないか?」
斗亜は思わず顔を上げた。
的確すぎる。
洞察というより、確信に近い。
翁はふっと鼻で笑うように続ける。
「昔の縁というやつでな。今も当時張り巡らせた情報網は生きておる。京都の表も裏も、大抵のことは耳に入る」
指先で畳を軽く叩く。
まるで情報がそこに流れているかのように。
「あの男が生きていて、京都を中心に不穏な動きがあると聞いた時は、半信半疑じゃった。…だが」
翁はじっと剣心を見る。
「君たちが現れたとなれば話は別じゃ。これは“偶然”ではない」
身を乗り出す勢いが増す。
「そこでだ。操を無事送り届けてくれた恩。そして御庭番衆の最期を見届けてくれた礼として…」
翁は胸を張った。
「この儂が、君たちの味方になろう!」
「おろ…」
「はい?」
剣心と斗亜が揃って固まる。
あまりに唐突で、しかし翁の目は真剣だった。
「儂は今の京都が好きなんじゃ。この都を守るため、今一度“老兵の出陣”といこう!」
「ちょ、ちょっと待つでござる…」
剣心が慌てて言いかけるが、翁は先回りするように手を振った。
「心配無用じゃ。葵屋の者は白も黒もお近もお増も、皆元・隠密御庭番衆。操と儂を守るくらい朝飯前の連中よ」
「いや…しかし…」
斗亜が言葉を探す。