第4章 因縁の残火
中から仲間たちが次々と顔を出し、賑やかな空気が広がる。
「それでは拙者たちはこれで…」
「待ちなされ」
二人が一歩引こうとした時、引き止められた。
「まだ礼をしとらんじゃろ。どうぞ、ゆっくりしていきなされ。緋村抜刀斎殿…そして、その後継者の緋村斗亜殿」
その名を口にされた瞬間、空気が変わった。
「それぞれの傷を隠しておっても、分かる者には分かる。それに…兄弟じゃ。よう似ておる」
斗亜と剣心の視線が鋭くなる。
「ご老人…」
「詳しい話は中でじゃ」
二人は客室に案内された。
ぴしゃ。
障子が閉まる。
外界の気配が断たれ、空気が重く沈む。
「道中、あの子は自分のこと“隠密御庭番衆”と言っておらんかったかな?」
「「もしや…」」
「お察しの通りじゃ。この柏崎念至。幕末は隠密御庭番衆の一員。京都探索方“翁”と呼ばれておった」
背筋を伸ばし、老人は名乗った。
「嘉永三年…黒船来航の折、先代御頭はこの国の主権が揺らぐと見抜かれた」
遠い記憶を辿る声。
「動乱の中心は京都になる。そう判断され、私はここに送り込まれた。この葵屋は、そのための拠点として開いたものじゃ」
小さく笑う。
「皮肉なことに幕府の方が先に潰れてしもうたが…維新後、行き場を失った仲間たちの駆け込み寺にはなった」
「なるほど…」
斗亜が低く呟く。
「それで…蒼紫とかいう男が、操を預けたってわけか…」
「蒼紫様をご存知で?」
翁の目が鋭く光る。
「あなたには…話しておくべきでござるな…」
剣心の声。
部屋の空気が、さらに重く沈んだ。
翁は、静かに頷いた。