第4章 因縁の残火
「やっと着いたね~!」
操が京都に入るなり、弾むように駆け出した。
「ここに戻ってくると、やっぱホッとするよ~!」
「この地だけは…二度と踏まぬと思っていたのに…」
剣心の呟きは、風に溶けるほど小さかった。
斗亜は、二週間前の墓前の光景を思い出す。
あの時の空気の重さが、一瞬胸をかすめた。
「二人共~!こっちこっち!」
「兄貴、行くぞ」
斗亜が歩き出すと、剣心は動かなかった。
足を止めたまま、遠くを見ている。
まるで過去の中に、取り残されてるようだ。
「緋村ぁぁ!!」
「おろっ!!?」
操が目の前で叫んだ。
「“おろ”じゃない!!何ボーッとしてんのよ!!」
腰に手を当てて睨む。
「京都に来てから変よ?斗亜は…まぁ元からだけどね」
「なぜ俺を巻き添えにする!?」
斗亜が即座に反発する。
「それにさ!その刀…二人してどうにかならない?」
操は顔を寄せて、小声で言う。
「京都だと、やっぱり目立つわ」
「いや、どちらかと言うと…操殿の衣装の方が…」
「あんだとっ!!?怒りの怪鳥蹴り!!」
バキャア!!!
「おろっ!?」
「お前らが一緒にいると、こっちが恥ずかしくなる…」
斗亜が深いため息をついた。
「とにかく、操は家に帰れ。家の人も心配してるだろう。で、家はどこだ?」
「すぐそこよ。ほら」
操が指差した先には、料亭があった。
「料亭…?」
「そ、葵屋。京都じゃちょっと名の知れた店よ」
胸を張る操。
「おーい!爺や~!!」
店先を箒で掃いていた老人が顔を上げる。
「ただいまーー!!」
「おお!お帰り!!」
感動の再会?のはずが…。
「痛い!痛い!いたたたた!!!」
満面の笑みで締め上げられる操。
「遅く帰った罰じゃい」
「(あ、これ怒ってるやつだ)」
斗亜は思わず吹き出した。