第3章 因縁の残響
「安心しろ。出来た女だ。栄次の面倒もきっちり見てくれる」
「菩薩のような女性でござるな…」
「いやもう菩薩と夫婦だな」
「余計な心配はするな。お前らはさっさと京都へ向かえ」
そして、剣心を真っ直ぐ見据えた。
「とっとと人斬りに戻れ。今回の闘いで分かっただろう?“流浪人”のお前じゃ、志々雄はおろか側近にも歯が立たん。逆刃刀が折れたのは、ちょうどいい。いい加減、覚悟を決めろ」
ぽん、と斎藤の手が剣心の肩に置かれる。
その重みは、言葉以上に深く沈んだ気がした。
「昔のお前に…期待してるぞ」
斎藤は横目で斗亜を見た。
「お前も、人斬りだった頃はまだマシだったんだ。そんな刀捨てて、そのまま人斬りに戻っちまえばいい」
「斎藤…俺はもう…あの頃には戻らない」
斗亜の声は、一切の揺らぎがなかった。
「妻と約束したんだ…だから…もう誰も殺さない。志々雄であってもな」
「フッ…兄弟揃って、甘ったれた戯言だな」
それだけ言い捨てると、斎藤は栄次の隣へ並びそのまま歩き出した。
振り返ることもなく。
「随分と足止めを食ったでござるな…」
剣心が前を向いたまま言った。
「先を急ごう。もう志々雄一派は手出ししてこぬでござる。東海道を進むでござるよ」
剣心と操が先を歩き始めた。
腰の蒼雲・鎮の鞘をぎゅっと握る。
「(とにかく…今は京都だ。俺と兄貴が“人斬りに戻るか否か”…その答えは、きっと京都にある)」
歯を食いしばり、少し遅れて歩き出す。
因縁の残響――完