第3章 因縁の残響
「生きている者が幸せに生きること。それだけでござる。この小さな手を血で汚しても、誰も喜ばぬ。時が流れれば、その手は必ず大きくなる」
視線を合わせる。
「志々雄一派のように力で人を踏みにじる男になるな。村人のように恐怖に縛られる男にもなるな。最期までお主を想い続けた兄上のように誰かを想える男になれ。そして幸せになるでござるよ」
「栄次、お前の目に映る人を守れるように強い男になれよ?」
斗亜がにっと笑い、栄次の頭に手を置く。
カシャン。
刀が手から落ちた。
張り詰めていたものが切れたように、栄次は声を上げて泣き出した。
「とりあえず、一件落着ってとこね」
操が大きく息を吐く。
「一件落着、ねぇ…」
斎藤の視線は、折れた逆刃刀に落ちていた。
「これで新月村にも、しばらく平穏が戻るな~」
崖の上から村を見下ろし、斗亜が呑気に言う。
「無責任に喜びすぎじゃない?なんか釈然としないんだけど」
「本番はこれからだぜ?」
斎藤の口元がわずかに歪む。
「今回の件で、村人同士の弱さも醜さも全部表に出た。しばらくは人間関係、荒れるだろうな」
その言葉に、斗亜が顔を引きつらせる。
「やっぱこいつの性格、釈然としねぇな…」
「それでも…」
栄次が村を見つめたまま口を開いた。
「ここは俺の故郷だ。良くなることを…祈るよ」
「栄次、大人だなぁ~!」
斗亜は、くしゃくしゃ~っと栄次の頭を撫でる。
「さてと…俺は戻るぜ」
「しかし…栄次はどうするでござるか?」
「俺もお前らも連れて行ける立場じゃねぇ」
斎藤は淡々と言う。
「しばらくは時尾の所に預ける。落ち着いたら身の振り方を考えてやる」
「「時尾?」」
斗亜と剣心は声を揃えて首をかしげる。
「家内だ」
一瞬、空気が止まった。
「結婚出来たのか!?その性格で!!!」
「か、家内~~!?」
「お主、所帯持ちだったのか!?」
三人まとめてずっこける。