第3章 因縁の残響
剣心は、折れた刀を静かに鞘へ収めた。
「逆刃刀…折れちゃったね…」
「志々雄も取り逃がしたしな」
ぽつりと落ちた斎藤の一言。
「コラッ!!」
操が即座に怒鳴り返す。
「何よ。刀なんてまた打てばいいし、志々雄たちだって追いかければいいじゃない」
操が腕を組んで言い放つ。
「そうそう。新月村からあいつを追い払えただけでも上出来だろ」
斗亜が軽く肩をすくめた。
その直後…。
チャキッ。
乾いた金属音が聞こえた。
刃こぼれだらけの刀を、栄次が両手で握り締めていた。
細い腕が震えている。
それでも、歯を食いしばりながら振り上げる。
「栄次!!やめろ!!」
斗亜が真っ先に気づき、叫ぶ。
振り下ろされる寸前、斎藤の手が伸びた。
栄次の襟首を持ち上げられ、そのまま宙に舞う。
ドガァァァァ!!!
襖に叩きつけられ、栄次は床に転がった。
「勝手に殺すな。こいつには、まだ吐かせることが山ほどある」
「そいつは俺の仇だ!!邪魔をするな!!」
泣き声混じりの叫び声。
だが、斎藤は鼻で笑う。
「阿呆。仇討ちは明治六年でご法度だ。これ以上、俺の仕事増やすな」
「斎藤、意外と優しい~」
斗亜が笑いながら茶化すように言う。
斎藤は、気絶している尖角の頭を蹴り上げた。
「どの道、こいつは終わりだ。取り調べ付きで死刑台送りだな。気絶したまま死ぬより…よっぽど堪えるぜ」
口元に浮かぶ、不敵な笑み。
「「鬼…」」
斗亜と操の顔が同時に引きつる。
「うるせぇ!!法令も死刑台も関係ねぇ!!俺が…この手で仇を討たなきゃ…兄貴たちが…」
栄次の小さな手に、そっと剣心の手が重ねられた。
包み込むように。
「死んだ者が望むのは、仇討ちではござらん」
揺るがない、剣心の静かな声。