第3章 因縁の残響
「昔お前と闘った時、今の技しか見せなかった。まさか…それしか持ってねぇ、なんて言わねぇよねな?」
「そんなわけあるか!!」
「ならいい」
志々雄の声が冷える。
「その代わり…尖角…お前は、この俺が直々に始末してやる」
尖角の顔が、恐怖に歪む。
次の瞬間、斗亜へ向かって突進してくる。
「うヴあ゛あぁぁぁぁぁ!!!」
「飛天御剣流――龍翔閃!!!」
斗亜の咆哮が座敷を震わせる。
閃光。
下から天へ突き上げる斬撃が、空気そのものを切り裂いた。
次の瞬間、尖角の巨体がびくりと跳ねる。
喉元に、細く赤い線。
血がわずかに滲む。
そのまま白目を剥いて崩れ落ちた。
畳が軋む重い音だけが残る。
「なんだ…殺してねぇのか」
斎藤が煙を吐きながら鼻で笑う。
「そんな木偶に情けをかけるとはな」
肩をすくめる。
「兄弟揃って甘すぎる。その甘さが、いずれ命取りになるぞ」
斗亜は答えず、刀の切っ先を志々雄へ向けた。
「この刀は、人を殺すためじゃない」
低く言い放つ。
「志々雄以外には、俺は甘いんだよ」
視線が真っ直ぐ突き刺さる。
「刀を取れ。あの時の決着を今ここでつけようぜ」
座敷の空気が震える。
「コソコソするな。堂々と見物しろ」
ガラッ。
斎藤がため息混じりに襖を開けた。
そこに倒れている操と栄次の姿。
「ただし…俺たちから離れるなよ」
「操殿…栄次…」
剣心の声が静かに落ちる。
「さっきの“龍翔閃”だがな」
志々雄が、じっと斗亜を見ていた。
「刀の腹で顎を打ち上げたな」
目が細くなる。
「本来は刃を立てて斬り上げる技だろ?」
「だからなんだ!!」
斗亜が叫ぶ。
「いいから早く剣を取れ!!」
だが志々雄は、淡々と首を振った。
「正直…がっかりだ」
その一言が、刃より鋭く突き刺さる。
「お前も先輩も、人斬りを止めたって話は聞いてた。だが、この目で見るまでは信じられなかった」
静かに続ける。
「そんな甘さで…俺を倒そうなんざ、百年早ぇ」
パチン。
指が鳴る。