第3章 因縁の残響
「兄弟揃って、くそ真面目な性格だな」
ゴン。
斎藤の拳が剣心の頭に落ちた。
「安い挑発だ。どっかの娘みてぇに、簡単に乗るな」
「操に聞かれたら、思いきりムキになって怒るな…」
斗亜がぼそりと足す。
「この村を取ったのはな」
志々雄の声が少し低くなる。
「東海地方制圧のための軍事拠点にするためさ。もっとも…この温泉が気に入ったのは本当だがな」
「黙ってろ」
剣心が口を開こうとした時、斎藤が低く制止した」
「ここを拠点にして、お前は明治政府に復讐する気か?」
志々雄はゆっくりと斎藤へ視線を向けた。
「新選組三番隊組長…斎藤一さん、だったか。あんたは二人の抜刀斎より、俺に近い性質だと思ってたんだが…どうも理解が足りないな」
志々雄が、少し残念そうに肩をすくめる。
「俺はな、この傷をつけた斗亜や、その仲間に復讐するつもりなんて…これっぽっちもない」
その言葉に三人は動かなかった。
空気だけが張り詰めていく。
志々雄の語る“思想”を前にして、迂闊に斬りかかる方が負けだと本能が告げていた。
静寂が、畳の上をじわりと這う。
「むしろ斗亜には感謝してるくらいさ」
「感謝、だと?」
斗亜の眉が歪む。
「あぁ。嫌というほど、この傷が教えてくれた。信じれば裏切られる。油断すれば殺される。だから、殺される前に殺れってな」
志々雄の口角が吊り上がる。
「それから…どんな姿になっても、本当に“いい男”には女が寄ってくるってこともな」
傍らの艶やかな女を、乱暴に抱き寄せる。
斗亜の顔が露骨に歪んだ。
「はっ!くだらねぇ!あの時は女一人近寄りもしなかったくせに」
ゴッ。
「うるさい」
斎藤の拳が、容赦なく斗亜の頭を打ち抜いた。