第3章 因縁の残響
スッ。
襖を開けた瞬間、座敷の奥に志々雄がいた。
悠然と、まるでこの場を“自分の家”のように支配して横たわっている。
「久しぶりだな。全身を焼かれてもまだ生きているとはな…やはりお前はしぶといな…」
志々雄の喉が低く鳴る。
「お前のおかげで、こんな体になっちまったがな。残念ながらお前は任務失敗だな」
恨みとも皮肉ともつかない湿った声で答えた。
剣心が一歩前へ出る。
「お主が、志々雄真実でござるか」
「“君”くらいつけろよ。無礼な先輩だな」
志々雄が口角を上げて言う。
「気にするな。無礼なのはお互い様でござる」
剣心が淡々と言葉を返す。
剣心の視線が、隣に立つ青年へと向けられる。
「お前はボーッと突っ立ってていいのか?兄貴と俺なら、一足飛びで志々雄に斬り込めるぞ」
斗亜が小さく青年に言うと、肩をすくめ相変わらず笑う。
「大丈夫ですよ~!緋村さんは、斎藤さんや斗亜さんと違って、不意打ちなんて汚い真似は絶対にしませんから~」
柔らかい声なのに、言葉だけは刺す。
斗亜の額にぴきりと青筋が走った。
「おい、斎藤。こいつ斬っていいか?」
「事実だろう」
斎藤は平然と言い、煙草に火をつける。
斗亜は舌打ちする。
「なんかお前に言われると、余計に腹が立つ…」
斗亜は志々雄を睨み据え、声を落とした。
「志々雄。なぜこの村を狙った?狙いは日本そのものだろ」
「温泉さ」
「は…?」
斗亜は間の抜けた声が漏れる。
志々雄は愉快そうに続ける。
「ここに湧く湯がな、俺の火傷に効く。湯治客は俺の姿を見ると腰を抜かす。だから俺のものにしてやった」
包帯の奥で笑っているのが分かる。
「元を辿ればだ。斗亜…この体にしたお前のせいでもある」
「お前は…」
剣心の言葉に、怒りが滲んだ。
「そんな理由で、村をここまで壊したのか?」
「冗談だよ」
志々雄は笑い、剣心を値踏みするように眺める。