第3章 因縁の残響
「黙れ小娘!!よそ者に何が分かる!!」
村長の声は、もはや悲鳴だった。
「ワシらは生かされておるんじゃ!!尖角様のお陰でな!!逆らう者はもう村人ではない!!」
その言葉に少年がゆっくり顔を上げた。
涙に濡れた瞳が揺れる。
「何を言っている。同じ村の人間だろう。仲間がこんな目に遭っても、まだ従うのか?」
斗亜の声が静かだが、怒りが滲んでいる。
村長の視線が一瞬泳ぐ。
「尖角様に刃向かえば死ぬ!!これ以上荒立てたくない!!よそ者と三島の者は今すぐ出て行け!!栄次、いいな?」
少年は拳を握りしめ俯いたまま答えられずにいた。
「この!!」
操が踏み出した、その瞬間。
ガシッ。
後ろから頭を掴まれる。
斎藤だった。
「落ち着け。命賭けて誇りや尊厳を守れる人間はそう多くない」
視線は村長へ向く。
「ただ生き延びるだけなら、家畜と同じだ。誇りも尊厳も必要ないからな」
「それでもだ!!」
村長は一歩も退かない。
「遺体を降ろすことは許さん!!」
ザッ。
二つの影が、同時に前へ出た。
剣心と斗亜だ。
ザシュッ。
ザシュッ。
一切の躊躇もなく、剣心と斗亜の刃が縄を断ち切った。
繊維が裂ける乾いた音だけが、異様に大きく響く。
吊るされていた両親の亡骸をそれぞれ抱きとった。
「これが、この村の現状だ」
斎藤が淡々と告げる。
「そして、これが志々雄が作ろうとしている“新時代”の日本の姿だ。
「滑稽だな…」
斗亜が吐き捨てるように言った。
その奥にあるのは軽蔑ではなく、怒りと絶望だった。
「人間は暴力の恐怖に弱い。支配されりゃ、ただ生きることが目的になる。誇りと尊厳も真っ先に切り捨てられる」
斗亜は亡骸へと一瞬だけ視線を落とし、次に斎藤を見た。
「なぁ斎藤…政府は、本当にこの村を見捨てたのか?」
剣心も真っ直ぐ斎藤を捉える。
逃げ道のない問い。