第3章 因縁の残響
「まさか…この少年の兄…警視庁の密偵だったのか…?」
斎藤の視線が斗亜に向いた。
「少年?」
両親の亡骸を見て肩を震わせている少年に視線を向ける。
「三島栄一郎…元はこの新月村の出だ。土地勘があり、よそ者と疑われにくい。だから潜入させた。正体が割れたんだろうな。家族だけでも逃がそうとしたのか。バカな男だ。俺の到着を待っていれば、まだ打つ手はあったのにな」
ぴきっ。
操のこめかみに、青筋が浮かぶ。
「ちょっと!!何よその言い方!!自分の部下でしょ!?」
斎藤は操を一瞥し、指を差す。
「なんだ、そのイタチみてぇな娘は」
「コロス!ブッコロス!!」
操が飛びかかろうとするのを、剣心と斗亜が慌てて押さえて止める。
「まぁまぁ…こやつは元からああいう不良警官でござる」
「いちいち真に受けんな。腹立てたら負けだぞ」
斗亜が苦笑しながら肩をすくめる。
「それよりも…」
すぐにまた空気が張りつめた。
剣心の視線が上がる。
縄に吊られた二つの亡骸を見る。
「早く降ろして、弔ってやろう」
少年の背中が小さく震えた。
「待て!!」
鋭い怒号が空気を裂いた。
木陰から現れたのは、村長らしき男だった。
白髪、濁った目、そこにあったのは理性ではない。
染み付いた恐怖だった。
「それは降ろしてはならん!!」
剣心が静かに振り返る。
「勝手な真似をして尖角様の怒りに触れてみろ!!村がどうなるか分からん!!許しが出るまで、そのままにしておくんじゃ!!」
「は?」
斗亜の眉がぴくりと跳ね、不機嫌な声を漏らした。
「恐怖している気持ちは理解できる。だが亡骸を弔うことすら禁じるとは…人として、あまりにも…」
斗亜が一歩近づきながら言う。
「うるさい!!」
村長が地面を踏み鳴らした。
「尖角様の怒りを買えば男も女も子供も、全員見せしめで首を吊られるんじゃ!!降ろすことは絶対に許さん!!」
その言葉に、剣心の目が細く鋭くなる。
「そんなの…そんなのおかしい!!」
操が叫んだ。