第3章 因縁の残響
「戻らなきゃ…」
足元が覚束ない。
「村に…まだ親父とお袋がいる…兄貴が死んだ今…俺が行かなきゃ…」
兄の亡骸を埋葬した地面に突き刺さっていた刀を引き抜こうとした。
その前に、剣心が静かに立つ。
「お主の兄の代わり、拙者たちが力を貸すでござる」
視線を操に向ける。
「操殿、この子を頼む」
「えー!!?あたしも行…っ」
言い返そうとした操の言葉が止まる。
剣心の眼差しが、突き刺さるようだった。
「ダメだ…村へ行くのは拙者と斗亜だけでござる」
操は頬を膨らまして、拳を握りしめるしか出来なかった。
森を抜け、村の入口へ踏み込んだ瞬間空気が変わった。
剣心と斗亜が同時に足を止めた。
「…っ!?」
斗亜の目が、わずかに揺れた。
血まみれの男女が縄で吊るされていた。
風に揺れるたびに、縄が軋む。
「親父!!お袋!!!」
草むらから飛び出した少年が、その場に崩れ落ちた。
家屋の陰から武器を持った男たちが現れる。
一人ではない。
二十、三十。
視界を埋めるように増えていく。
じりじりと間合いを詰めてくる。
「貴様…よそ者だな?」
「よそ者は生きて帰さん!」
「なぜ…この人たちを殺した?」
剣心は一歩も動かず、静かに問う。
先頭の男が鼻で笑う。
「逃げようとしたからだ。そいつらの息子が村を抜けようとした。だから責任を取らせた。尖角様が処刑した」
「見せしめ…か」
斗亜の目が、刃のように鋭くなる。
「嘘だ…親父も…お袋も…」
言葉にならない嗚咽が漏れる。
「よそ者には…」
操の背後から、粘りつくような声が響いた。
斗亜の目が大きく見開かれる。
「操!!逃げろ!!!」
雷名のような叫び。
操がゆっくりと振り返る。
そこに立っていたのは、血に濡れた刀を持った男だ。
剣心の表情が凍る。